2005年11月20日

食ったら逃げろ [コメンタリー]

先週はどこかの国の大統領が訪問とかで、京都御所の近辺は路地一本の入り口にも警察官が立つほどの警備が敷かれていました。大統領の訪問にあわせて「たぶんBSEに感染していない」牛肉の輸入を再開する準備も進められてきたとかで、吉野家に牛丼が戻る日も近いようです。

僕は食品の安全性に気を配らないほうではないですが、まあ正直なところ牛肉でも何でも「だいたい安全そうなら食べとく」くらいにしとかないと日常生活にも困ります。それに、このあいだみたいにキムチに回虫の卵が入っていた程度で、大騒ぎするのもどうかと思います。近ごろでは、寄生虫を飼っているほうが健康に良いという説もあるくらいで、何が幸いするかわかりません。

キムチはさておき、吉野家の牛丼が復活したら、また食べたいかどうか考えてみたんですけど、BSEは牛海綿状脳症といって、回虫を飼うよりずっと深刻な疾患であるように思えます。吉野家は、「たぶん安全な」米国産牛肉でなければ、安くてうまい牛丼を提供できないと主張しているようですが、「もっと安全な」豪州産牛肉を使用した牛丼を、既に提供している競合店もあります。当面は、競合店を利用しときたいと思います。

ところで吉野家といえば、何年もまえのことですが寒い夜に、三条河原町の角にある吉野家に入ったら、となりの席に座っていた労働者風のおっちゃんが、空になったビールびんとコップ酒と牛丼の器をまえにして、なんだか訳のわからないことを、独り言でもなし、かといって誰に話しかけるでもなしという風でわめいていました。

しまいには僕のほうに向いて「兄ちゃん、変なおっさんが騒いですまんなあ」と謝ってみたり、かなり酔ったようすで、僕もかえすことばがありません。バイトの店員も扱いかたを心得ていないようで、困った顔をするばかりです。誰もが「この人、早く帰らないかなあ」と思いはじめた頃、おっちゃんは「ちょっと小便してくる」といっておもてにでました。

これで少しのあいだ、店内が静かになる。店員も客もほっとしましたが、五分もしないうちに皆、「してやられた」ことに気づきました。おっちゃんは小便をするために店をでたのではなく、いやその必要もあったのでしょうが、要するにそのまま逃げたのです。店員は憮然とした表情で、残されたビールびんや器を片付けはじめました。

あとで思えば、最初からそのつもりで、ことさらに迷惑な客をよそおったのかも知れません。想像するに、あれは金を使わずに寒い夜をやり過ごすための、いつものやり口だったように思われます。あのおっちゃんがもし、今でもときどき吉野家で飲み食いしているなら、食い逃げを擁護する気はないですが、そのうち脳みそがスカスカになって死んだりしないよう願っています。

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