2005年09月01日

やさしいお医者さん [コメンタリー]

いつもの駅で電車を待っているときに、いやでも目に入る広告があります。太った、やたらに鼻の高い医者と、その前でうつむいている、あばら骨が透けるほど痩せた患者。

神経科の開業医の広告ですが、誰がこんなイラストを描いたんでしょう。その痩せた患者の頭部には、大きなコブがくっついています。そして大きく「心」と書かれたコブに聴診器をあてているのは、例の太った院長さんです。

そのコブは神経症を表現しているのか? 聴診器をあてると心の雑音がきこえたりするのか? このあと、院長さんはメスをとりだしてコブを切り取ってしまうのか? 〔それはひょっとして象徴的なロボトミーのようなものか?〕 これほど想像力を掻きたてるメタファーに富んだイラストには、めったにお目に掛かれません。でももし鬱症になったら、この医者には会いたくない。っていうかこのイラストを見ていると鬱になりそうです。

では僕らは、どんな医者に会いたいのか。同じ駅のコンコースに、さっきとは別の総合病院の広告がでています。この広告の写真に描かれているものは、さっきのイラストとは全く違います。やさしそうな看護婦さんに付き添われた、幸福そうな患者。そして彼を暖かく見守る、若い男性医師。あなたも、この人たちに会いたいのではないですか? と語りかけるような写真です。

確かに会いたくないとは言いません。もし病気で入院するようなことがあったら、笑顔を絶やさない看護婦さんや、常に信頼できる医者に見守られた、幸福な患者になりたい。でもこの写真に写っている人、きっと役者さんですよね。ひょっとして広告主の病院には、その役にふさわしい看護婦や患者さんがいなかったんでしょうか? それはそれで心配になります。あるいは、役者さんだと思ったのは僕の思い込みのせいで、この病院にいけばほんとうに、こんな人たちに会えるのかもしれません。

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