2005年07月13日

七月深夜の田中門前町 [日常のできごと]

知り合いの留学生の家族が、エチオピアからやってきました。アジスアベバからもってきたドロワット(代表的なエチオピア料理)があるからと、夕食に誘われました。

彼が住んでいる町内は、僕が学部生のころ、サークルの友人たちが下宿していた辺りで、昔から良く知っています。でも彼のアパートに行くのは今回で二回目だから、部屋まではたどりつけないだろうと思っていました。ところがアパートの数十メートルも手前から、懐かしいエチオピア料理の匂いが漂ってきたので、目指す部屋がすぐにわかりました。

強烈な匂いの原因は、エチオピア産のバターと唐辛子です。これがあれば日本でもドロワットをつくることはできますが、アジスアベバで調理されたドロワットは、味や香りが微妙に違います。たぶん微妙な違いでしかないのですが、ある意味では決定的な違いです。その匂いだけで、エチオピアにいるような気分にさせるからです。

しかし畳敷きのアパートの一室に充満している、じっとりと重い京都の夜の空気は、乾燥して涼しいアジスアベバの空気とは、ほんらい間違えようがないはずでした。

彼のアパートをあとにしたのは夜中の一時でした。信号をわたって大通りにでると、ぬるく湿ったアスファルトの匂いなのか、それとも近所の飲み屋やお好み屋から運ばれてくるのか、やけに覚えのある匂いがします。都会の夜の匂いと言ってしまえばそれまでですが、そうではなくて、僕がもっとよく知っている匂いです。

そういえば僕は学部生のころ、いつも友人のアパートに入り浸って、たあいもない話をしたあと、自転車でじぶんの下宿に向かうのがこの大通りで、ちょうど深夜のこの時間でした。あのときと全く同じ匂いです。そしてその匂いで僕は、二十歳の頃のあの気分、何が不安なのかわからないことが不安な、あの気分を思いだしました。

nishi makoto

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