2005年05月08日

水上温泉 [リポート]

このあいだ、水上温泉に行ってきました。谷川岳のふもとにあるこの温泉は、昭和六年、上越線の開通をきっかけに、多くのひとに知られるようになったのだそうです。与謝野晶子や太宰治、北原白秋らが訪れたという、由緒ある温泉地でもあります。ただこのところ、地方の温泉を訪れるたびに気になっていたのですが、水上温泉も例にもれず人影が少なく、廃業した温泉旅館がいやでも目を引きます。

先だっての不正表示さわぎでは、水上温泉でも水道水を使用していた施設があったことが発覚したようですが、もちろんそんな瑣末なことで、由緒ある温泉地が見捨てられたわけではありません。誤解を恐れずに言えば、一晩や二晩滞在して去ってゆくだけの観光客など、水道水を沸かして浸からせておけば、それでじゅうぶんなのです。そのうえ市販の「温泉の素」でも入れておいてくれたら大満足です。

そんなことより深刻なのは、温泉ブームと言われる日本で毎年、100軒もの旅館やホテルが廃業しているらしいことです。社員旅行などの団体客が減っているためだそうです。

僕はバブル末期に就職し、バブル世代らしくあまり深く考えずに会社を辞めた経歴があります。僕らにとって社員旅行は、唾棄すべきオヤジ社会の象徴でした。その思いはいまでも変わらないものの、会社を辞めてから十年が経ち、水上温泉の廃業したストリップ劇場の前に立つと、あの社員旅行が、じつは多くの人たちの生活を支えていたのだな、という風に思ったりもします。寂れた温泉場は、いわば「地上の星」が投げかける影のようなものでしょうか。

「団体客を相手にしたホテル経営はもう流行らないから、これからは源泉の雰囲気を大切にして、家族やカップルに足を運んでもらう努力が大切」などと、人ごとのように言ってみても何になるでしょう。それはつまり「生産性の低い社員はリストラされて当然」という、社員旅行なきあとの会社の姿を、温泉場にも徹底させよということです。

さて言い添えておくと、僕が泊まった観光ホテルは水道水ではなく源泉かけ流しで、施設も家族やカップルむけに改装されており、一泊二日の滞在でじゅうぶんにくつろぐことができました。寂れた温泉街から眺める谷川岳の美しさはおそらく昔とかわりがなく、通りには地元の人たちがつくった気の利いた手芸品を売る店がでていたり、無料で足湯を利用できる公営の温泉もできています。年に一度や二度は、国内の温泉にでかけるのも良いものです。

nishi makoto

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jafore.org/cgi/mt/mt-tb.cgi/86

このリストは、次のエントリーを参照しています: 水上温泉:

» 水上温泉 from Abyssinian Life Diary
三月の中旬、一泊二日で群馬の水上温泉に行ってきました。泊まった宿は、家族、夫婦、カップルの個人客でにぎわっていました。掛け流しの貸しきり岩風呂とヒノキ風呂があっ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年05月10日 10:34

コメント

この記事にコメントしてください



 (公開されません)


保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)