2004年08月23日
エチオピアの人名 [エチオピア]
昨日の女子マラソンで、エチオピアのアレム選手は惜しいところでメダルを逃しました。エチオピアには長距離走で力のある選手が多く、シドニーでは四つの金メダル(男子一万メートル、女子一万メートル、男子五千メートル、男子マラソン)を獲得して、国民は大いに盛り上がりました。
ところでアレム選手はエルフネシ・アレム(Elfenesh Alem)というなまえです。Elfenesh の elf は「一万」とか「とても多い」という意味があります。elfnesh はアムハラ語で「あなたは非常に多い」となります。もうすこし噛み砕いて言えば、「あなたはたくさんの人に匹敵するほど、大切な人だ」となります。
これはエチオピアで良く見られる名づけで、シドニーではミリオン(Million)という名前の男子選手が活躍しました。million は言うまでもなく「百万」を意味します。
他方、アレム(Alem)はアムハラ語で「世界」を意味します。ただし正確に言うと、エルフネシ・アレムさんの「アレム」は彼女の父親のなまえで、彼女のなまえは「エルフネシ」のほうです。
エチオピア人のなまえには「姓」がありません。なまえは「姓−名」とか「名−姓」ではなく、「名−父親の名−祖父の名」という風に並べます。だからアジスアベバでエルフネシ・アレムさんに「アレムさん!」と呼びかけても、彼女は振り返ってくれません。もし彼女の横に父親がいれば、彼が振り返ることでしょう。
日本人や欧米人の「姓」は家族や親族に共通のなまえですが、エチオピア人の「父親のなまえ」はあくまで父親のなまえなのです。ついでに言うと彼女が結婚しても、エルフネシ・アレムさんのままです。嫁に行って住む家が変わっても、父親を変えるわけではないからです。
エチオピアでは、アテネで女子マラソンを走った選手を「アレム」選手と呼ぶことはなく、「エルフネシ」あるいは「エルフネシ・アレム」と呼ばないと、話は通じません。ただしオリンピックのような国際試合では便宜上、アレムを「姓」として登録しているらしく、「アレム」選手と呼ばれます。
しかし考えてみれば昔、東京オリンピックで活躍したアベベ選手は、アベベ・ビキラ(Abebe Bikira)というなまえなので、ちゃんと(彼の父親ではなく)彼のなまえで呼んでいたことになります。もっとも「アベベ」ではなく、「アッババ」と発音したほうが、アムハラ語らしい響きになります。
なお駐日エチオピア大使館のホームページにはオリンピックのページが特設され、アテネで活躍している選手のプロフィールが詳しく紹介されています。
nishi makoto
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